Free Talk No. 18


                         函館の明治館のロビーに、

                        スタンウェイのグランドピアノが

                        置いてある。誰でも好きに弾けるよう

                        ざっくばらんに置かれていた。もう

                        ずいぶん前の事だけど、「いつか描き

                        たいから資料として撮っておこう」

                        と思って、いろんな角度から写真を

                        撮っていた。しばらくしてふらりと

                        大学生ぐらいの男の人が現れ、

                        ピアノの上に荷物を置くとイスに座

                        って弾き始めた。ポカンとして見て

                        いると、彼は突然こちらにやってきて

                        「すいません、撮ってもらえますか」と言

                        ってカメラを差し出した。「はぁ」と受

                        け取ると、彼はピアノの前に座って

                        こちらを向き、弾くポーズをとった。

                        私はふき出すのを抑えてファインダ

                        ーをのぞく。「……え?」マニュアルで

                        ある。ピントを合わせないとボケボケ

                        になってしまうのだ。「あのな〜っ

                        オートフォーカス全盛のこの時代に

                        そのへんの女の子つかまえてきて

                        こんなもん渡すか?少なくとも一言

                        あるだろう。思いっきりボケるの覚悟

                        の上だろうね!!?」しかしついつい

                        ピントを合わせて撮ってあげてしまう

                        私でした。「ピアノの弾ける男の子って

                        いいな」と思っていたけど、弾けりゃ

                        いいってもんじゃないと判りました。

                        あの彼はどうしているだろう…(音符マーク)


                                銀色のハーモニー・5巻 P.101より

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